日本でNew Spanish Booksのサイトを立ち上げて今年で10年目。1回目から、New Spanish Books全体の計画や運営に関わってくださっただけではなく、毎回スペインから届く全書籍の概要の翻訳・コーディネートもしてくださっている宇野和美さん。スペイン語圏の児童書を中心とした翻訳者としても第一線で活躍されています。そんな宇野さんが、スペインの児童書出版業界の全体像がよくわかるエッセイを寄稿くださいました。
スペインの子どもの本を翻訳するようになって25年ほどになる。翻訳する本を探そうという目的をもって初めてスペインで書店めぐりをしたのは1994年だったが、その頃は児童書コーナーの大部分をペーパーバックの読み物が占め、絵本はほんのわずかだった。1975年に独裁が終わって言論の自由を手に入れたスペインの1980年代は、独裁の言論統制下では出せなかった作品が、溢れるように生まれた熱気あふれる時代で、1990年代もまだその余韻が残っていた。