英語圏の独特な現代小説を小気味良い日本語に翻訳し、エッセイではご自身のシュールな頭の中をあばいてみせる岸本佐知子さん。翻訳文学について、また岸本さんの不思議な感性についてお話を伺いました。
翻訳家としての礎
子どもの頃は、『にんじん』と『銀の匙』と『小僧の神様』の3冊を繰り返し読んでいました。おもしろいともう一回最初から読むんです。好奇心の強い子なら、そこから他の本に広がっていくんでしょうが、私は広がらないタイプで、同じものばかり読んでいました。
それ以降もいろいろ読んではいましたが、自分にとって一番大きな読書体験となったのは中3の時に読んだ筒井康隆でした。スラップスティックなSFの短篇集だったのですが、「小説ってここまで自由でいいんだ!」とびっくりしました。