青山ブックセンターに20年以上勤務された後、現在、2011年12月にオープンした代官山 蔦屋書店でシニア・コンシェルジュとして働いてらっしゃる間室道子さんにお話を伺いました。

 

Q:代官山 蔦屋書店の一番の特徴は?

スペイン北部とフランス南西部にまたがるバスク地方では、バスク語と呼ばれる少数言語が話されています。そのバスク語から日本語に直接訳されたキルメン・ウリベ著『ムシェ 小さな英雄の物語』(2016年 白水社)が、今年、第2回日本翻訳大賞を受賞しました。日本では読める人がほとんどいない言語で書かれたこの小説を、美しい日本語に翻訳して私たちに紹介してくださった金子奈美さんにお話を伺いました。

 

未知の文化への憧れ

 

2011年にNew Spanish Books(以下NSB)の当ポータルサイトを日本語で開設してから、今年で10年(12回目)を迎えました。「スペイン語の書籍をなんとかして日本の皆さんにもっと読んでもらいたい」という願いから、日本の出版関係者に日本語でスペインの最新書籍情報をお届けしようという趣旨で始まったプロジェクトです。

一回目から選考委員として10年にわたってNSBを育ててくださった野谷文昭先生に、NSBのこの10年、そして今後についてご意見を伺いました。

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スペインの全人口よりも多い5000万人以上のヒスパニック系が暮らす米国では、その文学にもヒスパニック系の影響が色濃くみられるようになってきました。英語にスペイン語をたくさん散りばめた文体で話題となった小説『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』(ジュノ・ディアス著)の翻訳も手掛けた都甲幸治先生に、スペイン語圏文学について寄稿をお願いしたところ、迷わず選んだテーマはロベルト・ボラーニョ(1953-2003年)。そのダメ男ぶりに親近感を感じるそうですが…。近年日本でも次々と邦訳が出ている、50歳で早逝したチリ人作家の魅力について語っていただきました。

 

文学の赦し――ロベルト・ボラーニョの小説

僕にとって、ロベルト・ボラーニョとの出会いは衝撃だった。それまで中南米文学だと思い込んできたもの、すべてと違っていたからだ。確かに、ボルヘス『砂の本』の奇妙で凝縮された世界を愛していたし、ガルシア=マルケス『エレンディラ』の、傷ついたおっちょこちょいの天使の話も大好きだった。コルタサルの短編は不思議でスタイリッシュだったし、バルガス=リョサ『密林の語り部』では、一緒にペルーの川を遡っているみたいで興奮した。でも、ボラーニョは全然違う。